2022年9月29日
はじめに
AVPでは前2号(41・42号)で敵基地攻撃能力保有論を強く批判した。[i] だが私は、日本の防衛力が今の〈穴だらけ〉の状態のままでよいとは全然思わない。
日本の安全保障が想定すべき最も深刻なシナリオは、「中国が台湾独立を阻止するために武力行使に踏み切って米国が軍事介した時、在日米軍基地等が中国の攻撃対象となる結果、日中も戦闘状態に入る」というもの。AVP第41号で述べたとおり、中国との戦争は「核保有国を相手にしたハイエンド紛争」になる可能性が極めて高い。(ハイエンド紛争とは、「大規模かつ高烈度で、テクノロジー的にも洗練された通常兵器による戦争」のことである。)
「核保有国を相手にしたハイエンド紛争」と言えば、今行われているウクライナ戦争が歴史上、最初の実例だ。我々はウクライナ戦争から学ぶべきことが極めて多いはず。AVP本号では、ウクライナ戦争でロシアが苦戦している原因、裏返せば、不利と言われたウクライナが今日まで持ちこたえている原因をまとめてみた。
戦争の帰趨を決めた「キーウ攻防戦」
2月24日にロシアがウクライナに侵攻を開始した時、誰もがウクライナの敗北を予想した。開戦から半年以上が経った今、ウクライナはロシアの猛攻を持ちこたえ、南部戦線や東部戦線でも反攻に出ている。ロシアがここまで苦戦しているのは何故なのか?
ウクライナ軍の士気の高さや軍事・経済・情報面における米欧の大量支援については言うまでもない。だが、軍事戦略の観点から言えば、ウクライナ側が最重要拠点である首都キーウを守り切り、ロシアによるその「既成事実化」を阻止できたことが極めて大きい。それによって戦争は長期化した。
【コラム①: 「既成事実化」とは?】
武力紛争で侵攻した側が戦略的要衝を押さえ、その支配を相手方や国際社会に(黙認を含めて)認めさせることを「既成事実化」と言う。既成事実化するためには、領土を〈面〉として獲ることが必要であり、通常は「地上軍による制圧」を伴う。
一旦既成事実化されると、その状況をひっくり返すことはむずかしくなる。原状復帰できる場合でも、莫大な犠牲とコストを払わなければならない。
もしもロシア軍が侵攻を開始してから数日または数週間でキーウを陥落させることができていたら、その後の展開はどうなっていたか、少し想像してみよう。
プーチン大統領はゼレンスキー大統領を追放(または殺害)して傀儡政権を樹立し、ウクライナの3分の2程度は実質的に支配していただろう。ゼレンスキーまたは別の人物が亡命政権を樹立し、内戦状態は続いているかもしれない。だが、ロシアに抵抗するウクライナ国民の士気が低下していたであろうことは間違いない。 「反政府軍」に対する西側の支援も今日行われているような規模・内容ではなかったであろう。
主要な戦闘が短期で終わっていれば、現在ロシアが苦労している兵員や武器・弾薬の不足も表面化していないはず。傀儡政権との間で停戦を実現したうえで米欧に経済制裁の緩和を求めるなど、ロシアが国際的な駆け引きを展開する余地も広がっていたに違いない。
現実には、ロシアはキーウを占領できず、北部地域に侵攻したロシア軍も4月初旬までには完全撤退した。ゼレンスキー政権は今もウクライナを統治し、国民を鼓舞し続けている。米欧による対ウクライナ支援も着々と強化された。
戦いが長引いたことにより、戦争は「消耗戦」の様相を強めた。ロシア軍の被害は拡大し、1日十億ドル(約1,400億円)とも言われる戦費はロシアの国庫から毎日、確実に出て行く。[ii] 消耗戦に苦しんでいるのはウクライナも同じだ。しかし、米欧や日本など西側諸国が膨大な支援を続けていることで、何とか持ちこたえている。
[ウクライナ戦争関連地図] [iii]
一方で、ロシアは2月の侵攻開始以降、ウクライナの東部・南部の一部で支配地域を増加させた。[iv] ただし、ハルキウ(北東部)やオデッサ(南西部)といった重要拠点の「既成事実化」には失敗している。
現在、ゼレンスキー政権は東部と南部で反攻に出ており、ロシア軍は後退を余儀なくされている。だが、地上軍によって「面」として制圧された地域の奪還は決して簡単な話ではない。
クリミア半島と東部ドンバス地方(ドネツィク州とルハンシク州の一部)については、2014年段階でロシアの支配下に入った。その後も「既成事実化」が着々と進んでいる。東部と南部にはロシア語を話す人が多く、クリミアでは民族的にもロシア系が過半数を大きく超える。[v] 西側からロシア軍よりも優れた兵器の供与を受けているとは言え、ウクライナが2014年以前の線まで領土を奪還することは極めて困難な事業となる。[vi]
ウクライナ戦争の〈軍事的な〉教訓
キエフの既成事実化を免れたことを含め、ウクライナがここまで〈善戦〉し、ロシアがこれほど〈苦戦〉している理由は何か? 本稿では、日本の防衛力整備の議論に資することを念頭に置きながら、「ウクライナ戦争の教訓」を大きく3点、以下に示す。
1. 航空優勢を獲らせない
北部戦線でロシアが敗北した最大の原因の一つとして専門家の誰もが指摘するのは、ロシア軍が航空優勢を獲得できなかったことである。[vii]
【コラム②: 航空優勢とは?】
航空優勢は“air superiority”の訳語である。航空戦で敵と互角以上に戦える結果、「特定の時間と場所(地域)において、敵軍の決定的な妨害を受けることなく」陸海空軍の統合作戦を遂行できる状態を指す。[viii]
航空優勢を決めるのは、戦闘機、電子戦機、空中給油機などの性能――ステルス性能等――や数のみではない。艦対空ミサイルや地対空ミサイルなどの防空システム、サイバーや宇宙領域の能力など、様々な要素に左右される。[ix]
実戦では、時間や場所等によって航空優勢の度合いに〈まだら模様〉ができることが多い。[x] 例えば、味方の空軍基地に近い空域で兵力を集中できる時には「80対20」で航空優勢を獲得できたとしても、少し離れれば航空優勢の度合いは「60対40」に低下する。もっと敵の本拠地に近づけば、こちらは同じ兵力でも航空優勢は相手側に移る。
なお、航空優勢の海軍版として「海上優勢(maritime superiority)」という用語もある。訳語は「海上」となっているが、海中の状況(潜水艦)を含んだ概念。海上優勢と航空優勢は相互に連関することが多い。
≪ウクライナ戦争と航空優勢≫
ロシア軍が比較的最近に従事した戦争は、グルジアやチェチェン等での戦争、シリア内戦への介入など、まともな空軍力を持った国との戦争ではなかった。航空優勢の獲得を意識せずとも、地上軍で力押しすれば、どうにかなった。
だが、今日のウクライナは違った。2014年にクリミアを併合されて以降、米国等の支援を受けて軍の近代化に取り組み、戦略・戦術・訓練等も改善させていた。
コラム①で述べたとおり、キーウを既成事実化するためには、地上軍による制圧が必要になる。北部で航空優勢を獲得できなかったロシア軍は、エアカバー(上空援護)のないまま、性急に地上部隊を進めた。無人機を含むウクライナ空軍はロシアの地上部隊を空襲し、比較的自由に行動できたウクライナ陸軍も待ち伏せ攻撃を仕掛ける。ロシア軍は各地で前進を阻まれた。
航空優勢を獲れなかったことの弊害はそれだけではない。空軍による大規模な空爆も封じられた結果、ウクライナ領内の深部を攻撃しようと思えば、ロシアやベラルーシ、または黒海艦隊からミサイルを撃つほかなくなった。[xi] ところが、ロシアのミサイル攻撃には、後述のとおり、大きな限界があった。
侵攻からしばらくの間、ウクライナ南部や東部ではロシア軍が航空優勢や(黒海における)海上優勢の面で比較的優位な立場にあった。しかし、ウクライナ軍は4月14日にロシア黒海艦隊の旗艦「モスクワ」をミサイル攻撃で撃沈し、8月9日にはクリミアのロシア空軍基地で少なくとも9機の軍用機を破壊した。今や、南部・東部でもロシアが航空優勢・海上優勢を維持しているとは言いがたい。最近、東部や南部でウクライナ軍の反攻が勢いづき始めているのも、このことと無関係ではないだろう。
≪防空能力の維持≫
航空優勢や制空権という言葉を聞けば、我々は華麗な空中戦を連想しがちである。だが、ウクライナ戦争におけるロシア軍は、「ウクライナの防空システムを破壊できないが故に、ウクライナの上空を自由に飛ぶことができない」状況に陥っている。[xii]
ロシア軍は開戦と同時に、巡航ミサイルや弾道ミサイルでウクライナの空軍基地に一斉攻撃を加えた。ウクライナの空軍機と防空システムを使用不能にするためである。航空機については、2月24日に少なからぬ被害を出しているものの、致命的と言うほどではなかった模様だ。[xiii] 一方で、防空システムについてはウクライナ側が分散配置して発見しづらくしていたため、大半は破壊を免れた。[xiv]
その後も、ロシアはウクライナの防空システムを無力化できていない。ウクライナ軍のスティンガー携帯式防空ミサイルや地対空ミサイルS-300等に加え、西側が提供した兵器――例えば、ドイツ製の対空戦車(自走式対空砲)など――は今日も、ロシア空軍に脅威を与え続けている。[xv] 米空軍幹部によれば、ウクライナ侵攻の開始から9月19日までの間にロシア軍が失った戦闘機数は累計で約55機にのぼる。[xvi]
[スティンガー・ミサイル] [xvii]
[S-300 地対空ミサイル防空システム] [xviii]
※車両に搭載され、対空ミサイル・レーダー・管制システムがセットになって運用される。
今回の戦争では、ウクライナ軍のみならずロシア軍も戦場に無人機(UAVs)を投入している。だが、ウクライナ軍が撃ち落としたり、電子ジャミングをかけたりする結果、十分な戦果を出しているとは必ずしも言いがたい。
≪ミサイルの脅威と限界≫
今回のウクライナ戦争で得られた重要な発見の一つは、「通常兵器弾頭のミサイル攻撃だけで戦争に勝つことはできない」という事実である。少なくとも、「航空優勢が獲れなくても、ミサイルで遠くから攻撃できれば十分だ」ということにはならない。
7月18日、ゼレンスキーはロシアが開戦以来、3千発以上の巡航ミサイルをウクライナに発射したと述べた。[xix] 米国防総省も、ロシアが開戦から最初の14日間で710発以上のミサイルを発射し、68日間で2,125発以上のミサイル発射があったと発表している。[xx] にもかかわらず、ロシアはキーウを落とせなかった。ミサイル攻撃によって戦局がロシア優位となることもなかった。
ミサイルを撃たれれば、もちろん被害は出る。だが、通常弾頭ミサイルであれば、破壊力は実は限定的で、与えられる被害も「点」にとどまる。「既成事実化」にはつながらない。[xxi] 航空機や艦船なら命中すれば完全に破壊できるが、滑走路などであれば、穴をあけて一時的に使用不能にできたとしても、1日かそこらで修復されてしまう。また、標的に関する適切な情報がなければ、宝の持ち腐れと言ってよい。
前述のとおり、4月13日にウクライナ軍は地対艦ミサイル「ネプチューン」を2発、ロシア黒海艦隊の旗艦「モスクワ」に向けて発射して沈没させた。同艦の詳細な位置情報は米軍が提供したと言われている。[xxii] 「モスクワ」の沈没はロシアの海上優勢に風穴を開け、ロシア軍の士気を挫いた。通常弾頭ミサイルの脅威に関する評価は〈使い方によって変わる〉ということも覚えておきたい。[xxiii]
2. 情報戦で主導権を握る
戦争における情報の重要性は昔から指摘されてきた。ハイエンド紛争では、情報の使われ方がより多様化し、かつ高度化したと言ってよい。本節では、①状況把握、②サイバー攻撃・防御、③PR戦、という3つの側面からウクライナ戦争おける情報戦を概観する。
≪敵情把握≫
2003年3月20日にイラク戦争が始まった時、米軍はイラクのレーダー施設等を空爆や特殊部隊の攻撃で破壊したため、イラク軍には米軍の動きが見えなくなった。逆に米軍は、衛星や航空機等を使ってイラク軍の動向を詳細に把握した。米軍は火力のみならず情報面でもイラクを圧倒し、最小限の被害でフセイン政権を打倒した。
ウクライナ戦争とイラク戦争では訳が違った。ウクライナ北部で航空優勢を獲れないロシア軍には、ウクライナ領内で十分な航空偵察を行うことができない。ロシア・ベラルーシ領内からレーダーでカバーできる範囲も限られる。ロシア軍にとって、ウクライナ軍の動向把握は不十分なものとならざるを得ない。
ウクライナ軍が独自の情報収集能力をどの程度持っているのかは定かでない。ただし、米国が情報面でもウクライナ軍に協力していることは確かだ。米国は「ウクライナが自国を防衛するために有益な機密情報をゼレンスキー政権とタイムリーに共有している」と認めている。[xxiv] 少なくともウクライナ領内に侵攻してきたロシア軍の動向に関しては、〈攻撃に使える〉リアルタイム情報も提供している可能性が高い。
種々の状況証拠から判断する限り、米軍の情報収集能力はロシア軍を遥かに凌駕していると考えてよさそうだ。最近、ウクライナ軍の反攻が奏功するようになったのも、米軍とウクライナの間で情報共有が円滑化してきたおかげ、と言われる。[xxv]
現代の戦争では、敵の情報ネットワークは重要な攻撃目標だ。ロシア軍はウクライナの通信施設へ砲撃やミサイル攻撃を加えたり、ネットワークへのサイバー攻撃や電波・電子妨害(ジャミング)を仕掛けたりした。欧州で衛星ブロードバンド・サービスを提供するVIASAT(本社=米国)の通信網はロシアのサイバー攻撃を受け、ウクライナではインターネットサービスが1ヶ月以上も停止する。[xxvi]
その時、米スペースX社のイーロン・マスクは同社のスターリンク――地球低軌道上に打ち上げた数千の小型衛星と地上の送受信機を使ってネット接続を可能にするサービス――をウクライナ政府に提供した。おかげでウクライナ軍は、偵察・攻撃用ドローンの幅広い運用、部隊間の通信、ロシア軍の位置情報の把握など、対露軍事作戦を継続することができた。[xxvii] スターリンクの提供がなければ、ゼレンスキー政権が国民の士気を鼓舞・維持するために行うPR活動(後述)もウクライナ国民に届かなかったはずである。[xxviii]
『孫氏』に「彼を知り己を知れば百戦して殆(あや)うからず」と言う。その意味でロシアの最も根本的な失敗は、戦前にウクライナ軍の抵抗力とウクライナ国民の戦意を過小評価していたことだ。ロシアの情報機関がプーチンにとって耳あたりのよい情報しか上げていなかったことや、ロシア国防省が自軍の実力を過大評価していたこと等が指摘されている。プーチンは、彼も己も知らないまま、短期間での勝利を疑わずに侵攻を決意したのである。[xxix]
≪サイバー戦争≫
ハイエンド紛争は情報化・ネットワーク化の進んだ国同士の戦いとなるため、情報が直接的な武器として使われる傾向が強まる。「サイバー戦争」と呼ばれるものだ。
ロシアは元来、サイバー攻撃に長けた国として知られている。2015年12月と2016年12月にウクライナで大規模停電が起きた。これもロシアがサイバー攻撃を仕掛け、電力会社の制御システムを遠隔操作したためだと考えられている。[xxx]
今般のウクライナ戦争でも、ロシアはサイバー攻撃を仕掛けた。開戦の前日となる2月23日には、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)やそれに連なるグループがウクライナ政府機関やエネルギー・情報テクノロジー・金融・メディア等の民間企業など数百の標的に対して「ワイパー攻撃(=マルウェアを送ってコンピューターのデータを破壊するサイバー攻撃)」を実行した。その結果、ウクライナではウェブサイトがダウンしたり、機器の立ち上げが不能になったりするケースが相次いだ。[xxxi] (上述のVIASATの被害もその一例。)
しかし、今回のロシアによるサイバー攻撃や電子攻撃は「少なくともある程度〈中和〉され、ロシアが満足できるような結果は出せていない」という評価が一般的である。2015年及び2016年に自国電力網がサイバー攻撃されたのを受け、ウクライナ政府自身も早くから対策を講じていた模様だ。
米国は開戦のずっと前から、サイバーの面でもウクライナを大々的に支援してきた。米サイバー軍や国家安全保障局(NSA)はウクライナ政府・軍のネットワークの強靭性向上に協力したり、ロシアのサイバー攻撃を〈狩る〉ためのチームをウクライナに派遣したりしている。
米国の情報通信企業もウクライナを積極的にサポートした。例えば、マイクロソフトは開戦前からロシアによるサイバー攻撃についてウクライナ政府に情報を提供し、その対処法を授けていた。[xxxii]
サイバー攻撃を行っているのはロシアだけではない。ウクライナ政府は「ウクライナIT軍」を創設し、世界中のIT人材に対露サイバー攻撃への参加を呼び掛けている。[xxxiii] 米サイバー軍とNSAもウクライナを支援するために攻撃的なハッキング作戦を実施していることを認めた。[xxxiv]
≪PR戦≫
戦争遂行に当たっては、自国民や国際社会の支持を得た方が事は有利に進む。そのために「自国に有利なストーリーを作り、それを〈聴衆〉に上手に伝える」ことがPR戦の役割。それ自体は特段目新し概念ではないが、今日のPR戦はネット空間の登場によって従来よりもダイナミックな展開を見せる可能性が出てきた。
ウクライナ戦争でロシア側がPR戦にそれほど多くのエネルギーを割いてきたようには見えない。[xxxv] 「(PR戦をしなくても)短期間で勝てる」という見通しを持っていたことに加え、PR戦によって自国のイメージ・アップを図るという発想自体がロシアには乏しかったのだろう。下の写真を見ても、対外的PR戦に対するロシア政府の鈍感さがわかる。本節で注目するのはウクライナが展開したPR戦である。
[クレムリンでマクロン仏大統領(右)と会談するプーチン大統領 (2022年2月7日)] [xxxvi]
ウクライナ戦争におけるPR戦では、開戦以来一貫してウクライナ側が主導権を握っている。[xxxvii] その主役はゼレンスキー大統領だ。オリーブ色のTシャツを着た若き指導者は連日ソーシャル・メディアでロシア兵の悪逆非道な行為を罵り、ウクライナ国民の間でロシアに対する憎悪をかきたてる。そうかと思えば、打ち捨てられたロシア軍の戦車やロシア軍捕虜の映像を流し、「ロシア軍は打ち負かすことができる」というイメージを拡散した。ウクライナ国民や兵士の士気は否応なく高まった。
[ゼレンスキー大統領 (2022年3月16日)] [xxxviii]
ゼレンスキーのメッセージは全世界に向けて発せられる。彼は「ウクライナは民主主義と欧州全体のために戦っている」と強調し、ウクライナ支援や対露制裁に消極的な国を名指しで批判することも珍しくない。西側メディアはその姿を連日連夜、繰り返し伝えた。少なくとも西側諸国の世論は「親ウクライナ・反ロシア」に染まり、かつてない規模のウクライナ支援と対露制裁が行われることとなった。
ロシア国民の間で反戦・反プーチンの機運を醸成することもまた、ウクライナ側の狙いである。9月24日にもゼレンスキーはロシア兵に投稿を呼びかける動画声明を出したばかりだ。[xxxix]
[衆議院議員会館でオンライン演説するゼレンスキー大統領(2022年3月23日)] [xl]
ゼレンスキーの言葉やウクライナ政府・軍の発表が全部真実なのかと言うと、決してそうではない。[xli] 戦争に騙し合いは付き物だ。8月9日のBBC報道によれば、ゼレンスキーの側近は「今日、ウクライナ政府の発する発言のすべては、情報戦及び心理戦における作戦の一部だ。我々はロシア軍の士気を挫く必要がある」と明言している。[xlii]
ロシアとウクライナの政府や軍の公式発表は所詮、「大本営発表」である。しかし、世界(特に西側諸国)の大多数の人々は「ウクライナの発表する情報はすべて正しく、ロシアの発表はすべからく嘘である」と受け止めている。「ウクライナの発表に疑問を挟むのは、ロシアを支持することと同じ」という空気さえ、漂う。[xliii] ウクライナはPR戦によって見事なまでに〈国際的な洗脳〉をやってのけたのだ。[xliv]
3. 継戦能力の差
有事に際して軍隊(または国家)として組織的な戦いを継続できる能力を「継戦能力」と言う。短期決戦ならいざ知らず、長期戦・消耗戦になれば、彼我の継戦能力の差が勝敗の大きな分かれ目になる。継戦能力を構成する要素は幅広い。本節では、ロシア軍が直面し続けている兵站の問題をとりあげる。[xlv]
【コラム③: 兵站とは?】
兵站(logistics)の定義は国や軍隊、人によって微妙に異なる。NATOでは、「軍隊の活動と維持管理を計画し、実行する技術」を兵站と呼ぶ。より具体的には、①物資(武器・弾薬・燃料・食料等)に関する企画・開発・調達・貯蔵・輸送・配備・維持管理・退避・処分、②人員の輸送、③施設の取得・建設・維持管理・稼働・処分、④役務の提供、⑤医療及び衛生サービスの支援、を指す。[xlvi]
ヘンリー・エックレス米海軍少将は「兵站とは、国家の経済と戦闘部隊の戦術的作戦活動の間を橋渡しするものである」と述べている。[xlvii] 経済力・技術力の優れた国の軍隊であっても、兵站が拙ければ、前線で戦う軍隊は本来の実力を発揮することができない。
《ロシア軍の兵站問題》
2月24日に戦端が開かれると、ロシア軍は大量の戦車部隊等をキーウに向かわせ、圧倒的な火力でウクライナの領土を蹂躙したかに見えた。しかし、ウクライナ領内に入ったロシア軍の前線部隊に対する補給は〈お粗末〉の一言だった。弾薬や燃料が適時に届かず、作戦効率は低下。補修部品や整備士が現地に届かなければ、動かなくなった戦闘車両は放棄するしかない。食糧や水、薬品の不足は兵士を苦しめ、士気を下げた。
もともと、ロシア軍の基本思想は兵站をあまり重視していないと言われている。米軍では前線に送る戦闘兵1人につき、10人の支援兵がいる。単純な比較はできないが、ロシアの大隊戦術軍(700~900人)のうち、支援兵は150人程度にすぎない。[xlviii]
ロシア軍の兵站活動は伝統的に鉄道への依存が大きい。[xlix] ところが今回、ロシア軍はハルキウやチェルニーヒウなど(特に北部、北東部における)ウクライナ鉄道網のハブを制圧できなかった。ロシアの鉄道とウクライナの鉄道を繋ぎ、ウクライナ国内に物資を運ぶ、という目論見ははずれた。
[ウクライナの鉄道網] [l]
その結果、ロシア軍の補給は道路への依存を強めた。しかし、ウクライナ北部は季節的に泥濘がひどく、幹線道路はロシア軍車両で渋滞した。ウクライナ軍はそこを狙い撃ちした。ロシア軍は〈道路を使った輸送部隊に対する防御〉を軽視していたため、被害は拡大した。
ウクライナはロシア軍の燃料貯蔵施設や武器・弾薬庫に対しても比較的早い段階から攻撃を加えた。[li] 6月に米国から高機動ロケット砲システム「HIMARS」を供与されると、ウクライナはロシア軍占領地域にある敵の弾薬庫等を精密誘導攻撃した。これでウクライナ側は「兵站を叩く」戦いではっきりと優位に立った。[lii] 弾薬庫等を次々に破壊された結果、東部戦線におけるロシア軍の攻撃レベルが減少したという分析もある。[liii]
《武器・弾薬の不足》
ハイエンド紛争では尋常ならざる量の兵器や弾薬が使われる。ウクライナ戦争も短期戦で終わればよかったが、長期化して〈消耗戦〉となった今、両軍は共に武器・弾薬の不足という深刻な問題に直面している。[liv]
ロシアは旧ソ連時代からの名残で大量の武器・弾薬を保有していたとされる。[lv] それでも、大量の火砲・ロケット砲を毎日撃っていれば、備蓄は尽きてしまう。最近では、窮したロシアが「北朝鮮から数百万発のロケット弾や砲弾を購入しようとしている」という観測も出ている。[lvi]
ロシア軍は最初の30日間で1250発以上のミサイルを撃ち、備蓄の半分近くを使った模様だ。[lvii] 特に、精密誘導型ミサイルの在庫が急減した。[lviii] 〈弾切れ〉の懸念を強めたロシア軍は、1960年代に製造された対艦ミサイルを地上の標的に向けて使用したことすらあった。[lix]
ロシアとしては、国内で精密誘導型ミサイルを含む兵器を大増産したいところ。しかし、西側によるハイテク製品禁輸のため、必要な部品が足りない。ロシアで戦車を製造するメーカーのうち、2社は部品不足から製造中止に追い込まれたと言う。[lx] ドローンも自前で修理できなくなり、イラン製の輸入を始めた。[lxi]
武器・弾薬の外部調達に関し、質と量の両面で一番期待できるのは中国である。だが、中国は西側の対露貿易制裁にこそ加わっていないものの、ロシアへの武器・弾薬等の提供は一貫して拒んでいる。[lxii]
ウクライナ軍も武器・弾薬不足から無縁ではない。[lxiii] 夏前にロシア軍が東部・南部で支配地域を増やした要因の一つも、ウクライナ軍が武器・弾薬の不足に苦しんだことにあった。当時、ウクライナ軍の砲撃はロシア軍の10分の1にとどまり、第二次世界大戦時の機関銃さえ使ったと言われる。[lxiv]
自国で武器・弾薬をほとんど調達できないウクライナの場合、米欧からの支援に頼るしかない。だが、〈支援のサイクル〉が回り始めると、世界最大の軍事大国である米国が味方ついている分、ウクライナは有利になってきた。[lxv]
ただし、米欧も武器・弾薬を無尽蔵に持っているわけではない。米国はウクライナに155㎜りゅう弾砲――約45㎏の砲弾を数十㎞離れた標的に正確に命中させられる口径155㎜の火砲(下記写真)――を供与し、8月24日までに最大80万6千発の弾薬を提供した。これにより、米軍の倉庫に保管されている砲弾数は「不快なほど低い」水準にまで減少している。[lxvi] 今やウクライナ軍の〈切り札〉となった観のあるHIMARSを含め、米国がいつまでも大盤振る舞いを続けられるとは限らない。[lxvii]
[米軍がM777 155mm榴弾砲を発射した瞬間] [lxviii]
おわりに
ウクライナ戦争と(将来起こり得る)台湾有事がまったく同じような戦争になることは、もちろんない。例えば、ウクライナとロシアは地続きだが、台湾や日本と中国の間には海がある。一方で、台湾の面積は広大なウクライナの約17分の1しかない。台湾有事に米軍が直接介入するかどうかでも、構図は一変する。
しかし、冒頭でも述べたとおり、台湾有事はおそらく、ウクライナ戦争と同じく「核保有国を当事者とするハイエンド紛争」になる。ウクライナ戦争におけるロシアの失敗とウクライナの成功を分析することは、日本の防衛戦略を検討するうえで間違いなく〈一つの出発点〉となるだろう。
本号やこれまでの考察を踏まえ、AVP次号ではいよいよ、「日本防衛のあり方」へと議論を進める。
[i] » 核・ミサイル保有国の領土内を攻撃するのか? ~ウクライナ戦争に学ぶ日本の防衛力整備① Alternative Viewpoint 第42号|一般財団法人 東アジア共同体研究所 (eaci.or.jp)
» 「敵基地攻撃能力」論議の真実 Alternative Viewpoint 第43号|一般財団法人 東アジア共同体研究所 (eaci.or.jp)
[ii] ウクライナ戦争が始まってからもロシアはエネルギー輸出によって1日あたり十億ドル近い収入を得ている。そのすべてが戦費に消えている計算になる。
[ⅲ] Viewsridge – 投稿者自身による著作物, derivate of Russo-Ukraine Conflict (2014-2021).svg by Rr016Missile attacks source:BNO NewsTerritorial control sources:Template:Russo-Ukrainian War detailed map / Template:Russo-Ukrainian War detailed relief mapISW, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=115506141による
[iv] 本稿執筆時点でまさに東部・南部4州でロシア編入へ向けた住民投票が実施された。これもロシアが同地域の「既成事実化」を強めるための動きである。
[v] 2014年時点でロシア系が67.9%、ウクライナ系が15.7%、タタール系が12.6%であった。(Demographics of Crimea – Wikipedia) 2014年の併合後、約24万7千人がロシアから移住し、ウクライナ系とタタール系を中心に約14万人がクリミアから去っている。(Shifting Loyalty: Moscow Accused Of Reshaping Annexed Crimea’s Demographics (rferl.org))
[vi] AVP第43号で述べたとおり、ロシアがクリミアを失うような事態が出てくれば、ロシアによる核兵器使用の可能性もまた現実化するであろう。
[vii] ロシア軍とウクライナ軍は双方ともウクライナ全土に対する航空優勢を持っていない、というのが正確な表現である。
[viii] A House Built on Sand: Air Supremacy in US Air Force History, Theory, and Doctrine (af.edu) p.13.
[ix] The future of air superiority | Air and Space Power Centre (airforce.gov.au)
[x] 航空優勢とよく似た言葉として、「制空権(control of the air / air supremacy)」がある。これは敵の空軍力を破壊して当該空域の支配権を完全に獲得し、維持している状態を指す。米軍とイラク軍のように余程の戦力差がないと実用的な概念ではないため、最近はあまり使われない。
[xii] ウクライナ空軍はソ連時代の旧式戦闘機を引き続き使っている。ゼレンスキー政権は西側に欧米製の新鋭戦闘機を提供するよう要求したが、無人機以外は断られている。一方、ロシアはステルス性能の高い第5世代戦闘機を含め、ウクライナよりも戦闘機の性能はずっと上のはず。空中戦の強弱のみで航空優勢が決まるのなら、ロシアがウクライナ全土で航空優勢を獲得しても不思議ではなかった。
[xiii] List of aircraft losses during the Russo-Ukrainian War – Wikipedia
[xiv] The curious case of Russia’s missing air force | The Economist
[xvi] ウクライナ、ロシア軍戦闘機55機撃墜 米空軍幹部 – CNN.co.jp
[xvii] US Air Force from USA – I love my job!, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=50894779による
[xviii] By Vitaly V. Kuzmin – http://vitalykuzmin.net/?q=node/459, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=30890157
[xix] Russia has launched more than 3,000 cruise missiles over Ukraine — Zelenskyy | Ukrainska Pravda
[xx] Senior Defense Official Holds a Background Briefing, March 9, 2022 > U.S. Department of Defense > Transcript ; Senior Defense Official Holds a Background Briefing > U.S. Department of Defense > Transcript
[xxi] ロシアのショイグ国防相は8月21日、速度はマッハ10、最大射程は約2,000㎞とも言われる「キンジャール」をウクライナ戦争で3回使用したと述べた。極超音速ミサイルは既存のミサイル防衛では防御不能と言われる。だが、所詮は通常弾頭ミサイルだ。破壊力に限界があることは、何一つ変わらない。通常のミサイルに比べて高価なため、何発も打ち続けることはできないだろう。オースティン米国防長官が「これで(ロシア苦戦の)流れが変わるとは思わない」と述べたのも虚勢ではなかろう。 (ロシアがウクライナに発射した極超音速ミサイルについて知っておくべきこと – CNN.co.jp)
[xxii] Moskva sinking: US gave intelligence that helped Ukraine sink Russian cruiser – reports – BBC News
[xxiii] ウクライナにおけるロシア軍のミサイル使用は、陸軍や空軍との連携が悪かったことによってその効果が一層限定された、という批判がある。中国は今後、ウクライナ戦争を教訓としながら、台湾有事におけるミサイルの有効な使用方法について必死で研究するだろう。ミサイルの脅威に過剰反応するのは間違いだが、中国がロシアと同じ失敗を繰り返すと決めつけ、油断すべきではない。
[xxiv] How US military aids Ukraine with information, not just weaponry – CSMonitor.com
[xxv] ウクライナ軍の戦果に慎重姿勢も諜報共有の拡大評価、米分析 – CNN.co.jp
[xxvi] Russia downed satellite internet in Ukraine -Western officials | Reuters 見えてきたサイバー戦 ハイブリッド戦 ウクライナで激しい攻防 | NHK | WEB特集 | ウクライナ情勢
[xxvii] スターリンク提供については下記等を参考にした。スペースX「スターリンク」がウクライナで証明した宇宙・サイバー・電子戦での実力:松原実穂子 | 記事 | 新潮社 Foresight(フォーサイト) | 会員制国際情報サイト (fsight.jp)
[xxviii] The Russia–Ukraine War: Ukraine’s resistance in the face of hybrid warfare | ORF (orfonline.org)
[xxix] R47068 (congress.gov) p. 9-10
[xxx] 電力インフラを襲うサイバー攻撃、ウクライナ停電事件は対岸の火事ではない | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)
[xxxii] The hybrid war in Ukraine – Microsoft On the Issues
[xxxiii] “サイバー攻撃=犯罪だが…” ウクライナ「IT軍」の日本人 参戦の理由 – クローズアップ現代 – NHK
[xxxiv] 例えば、ロシア空軍と地上部隊の機密回線として使われていた3Gネットワークが使えなくなったのも米軍等がロシアに対してサイバー攻撃を加えた結果と考えられている。The Russia–Ukraine War: Ukraine’s resistance in the face of hybrid warfare | ORF (orfonline.org)
[xxxv] ロシアの(限られた)PR戦の主な対象は、ロシア国民のほか、インド、中国、アフリカ、南アジア諸国だと言われる。 Ukraine has upper hand in information war, but Russia eyes a long game | The Times of Israel
[xxxvi] このファイルはロシア連邦大統領のウェブサイトから提供されており、著作権で保護されています。このファイルはクリエイティブ・コモンズ 表示 4.0ライセンスの下に利用を許諾されています。即ち、www.kremlin.ruに帰属させる限り、ファイルの配布や改変は自由に行うことができます。注意:2015年4月8日以前にサイト上で公開された著作物も、クリエイティブ・コモンズ 表示 3.0ライセンスの下に利用を許諾されています。ロシア連邦大統領報道官からの許諾書はこちらから利用可能です。 – http://kremlin.ru/events/president/news/67734/photos/67564, CC 表示 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=115064200による
[xxxvii] ウクライナのPR戦は伝統的メディアやソーシャル・メディアを駆使して行われたのみではない。2019年にゼレンスキーのアドバイザーとなったウクライナ系米国人アンドリュー・マックをはじめ、ゼレンスキーの側近たちは米国のエリート層やメディアへの働きかけを長期にわたって行ってきた。おそらく、 The influencers behind the Ukrainian PR machine – POLITICO Ukraine’s PR Machine Is Sputtering. Does It Matter? (foreignpolicy.com)
[xxxviii] President Of Ukraine from Україна – Address by President of Ukraine Volodymyr Zelenskyy to the US Congress., PDM-owner, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=116127375による
[xxxix] ロシアではインターネットの検閲などが行われている。しかし、ロシア国民が外国のネット情報にまったくアクセスできないわけではない。参考として以下。 通信暗号化で検閲回避 ロシア市民の「VPN」利用が急増 | NHK | IT・ネット
[xl] 首相官邸ホームページ, CC 表示 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=116356028による
[xli] 他愛ない例を言えば、開戦当初、ウクライナ空軍に「キエフの幽霊」というニックネームの凄腕パイロットが登場し、数日間でロシア軍機を最大40機以上撃墜したという話がSNS等で拡散。ウクライナ政府も本人の顔写真を明らかにした。 「キエフの幽霊」って何者? ウクライナ空軍に1日で6機撃墜のエースパイロット誕生か | 乗りものニュース- (2) (trafficnews.jp) だが今は、そんな人物は存在せず、画像もフェイクだったことが明らかになっている。
[xlii] このインタビューを伝えた英語メディアはロシア系メディアやReddit等にとどまるようだ。私も最初、これがロシア側のフェイクニュースであることを疑った。しかし、BBCウクライナ語版を英語に翻訳したところ、上記発言内容が確認できたので本文に載せた。 Mykhailo Podolyak: “We will fight until the last Russian on the territory of Ukraine” – BBC News Ukraine なお、本稿ではウクライナ側の公式発表をいくつか引用している。この発言を心の片隅に置いたうえでお読み頂ければ、ありがたい。
[xliii] 8月4日、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルはウクライナもロシアと同様に「民間人居住地域に軍事拠点を置いて市民を危険にさらしている」と批判した。これに対し、ゼレンスキーは(事実関係を争うことなく)猛反発し、事務総長の辞任を求めた。日本のメディアを含め、西側メディアはこの問題を深掘りすることを避けたように見える。 「ウクライナは民間人居住地域に軍事拠点置き市民を危険にさらす」アムネスティが批判|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp) ゼレンスキーも猛抗議…なぜ国際人権団体は、「被害者」ウクライナを批判した?|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)
[xliv] 2020年12月31日付AVP第15号で、私はスティーブ・バノンが(偽)情報を駆使して行った米国民洗脳作戦について書いた。今回、ウクライナは国家規模で世界に対して情報操作を行い、大きな成功をおさめたのである。 » ネット・フェイク病の蔓延と民主主義の危機~民主主義考2020s①|一般財団法人 東アジア共同体研究所 (eaci.or.jp)
[xlv] CSISのジョーンズはウクライナ戦争の最初の3か月におけるロシアの失敗を観察し、ロシアの失敗として真っ先に「兵站の失敗」を挙げている。本節の記述も以下を参考にした。Russia’s Ill-Fated Invasion of Ukraine: Lessons in Modern Warfare | Center for Strategic and International Studies (csis.org)
[xlvi] NATO – Topic: Logistics
[xlvii] Logistics: The Lifeblood of Military Power | The Heritage Foundation
[xlviii] Why the Russian military is bogged down by logistics in Ukraine – The Washington Post
[xlix] ロシア軍は、鉄道を守り、鉄道を修理・補修するための専門部隊も持っている。
[l] Voland77 – 投稿者自身による著作物, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2687019による
[li] 4月頃にはロシアやベラルーシ領内の燃料貯蔵施設等が爆破されている。ウクライナ政府は関与を否定しているが、西側の情報筋を含めてウクライナ側の所業という見方が多い。
[lii] ウクライナはHIMARSを受領してから約1か月で50か所に上るロシア軍の弾薬庫を破壊したと発表している。この数字を鵜呑みにすべきかはともかく、ウクライナ側が攻勢に出ていることは間違いない。 Ukraine Says It Has Destroyed 50 Russian Ammunition Depots Using HIMARS (usnews.com)
[liii] ウクライナ東部 ロシア軍の攻撃減か 衛星画像の熱源データ分析 | NHK | ウクライナ情勢
[liv] 本稿では触れないが、ロシア軍にとっては〈兵員の不足〉も大問題である。9月21日には予備役の部分的動員令が出され、ロシア国内に混乱をもたらしていることは周知の事実だ。
[lv] 長期戦 弾薬供給が重要…米戦略国際問題研究所上級顧問 マーク・カンシアン氏[ウクライナの教訓 侵略半年] : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)
[lvi] ロシア、北朝鮮からロケット弾大量購入の手続き 米当局者 – CNN.co.jp ただし、実際に購入したという確認はとれておらず、北朝鮮も現時点では否定している。 ロシアが北朝鮮から購入した兵器、ウクライナに持ち込んだ「兆候なし」 – CNN.co.jp 北朝鮮、ロシアに「武器を輸出したことは一度もない」 国営通信 – CNN.co.jp
[lvii] Senior Defense Official Holds a Background Briefing > U.S. Department of Defense > Transcript
[lviii] それに伴って精度の低い旧型の中距離ミサイルや火砲・ロケット砲が多用されるようになり、民間人に対する被害も増えていった。
[lx] U.S. Says Export Controls Are Hurting Russia’s Battlefield Might (wsj.com)
[lxi] イランが戦闘用ドローンをロシア側に納入、役に立つのか?(Forbes JAPAN) – Yahoo!ニュース
[lxii] 中国のロシアへの兵器供与、これまで形跡なし バイデン氏 – CNN.co.jp
[lxiii] Both Sides in Ukraine War Face Ammunition Squeeze (voanews.com)
[lxiv] ウクライナ軍、東部でロシアに苦戦 砲弾不足や80年前の武器「水で冷やしながら…」:朝日新聞GLOBE+ (asahi.com)
[lxv] 米欧は開戦直後から大量の武器・弾薬をウクライナに供与すると約束した。しかし、十分な量の武器・弾薬が前線のウクライナ軍兵士の手に行き渡るまでには時間がかかった。供与する武器・弾薬をウクライナ国内及び前線まで無事に輸送することはもちろん、新たな武器・弾薬の使い方をウクライナ兵に教える必要もあった。
[lxvi] 米国の場合、「武器弾薬は発注から生産されるまでに13~18カ月」を要し、ミサイルやドローン等の先進的兵器の在庫を補充するには、もっと時間がかかる」ということだ。 ウクライナ戦争で米弾薬在庫が激減 国防総省が懸念 – WSJ
[lxvii] 米戦略国際問題研究所(CSIS)上級顧問のマーク・カンシアンによれば、米軍が保有するHIMARS用の高精度ロケット弾は2万5千発程度であり、ウクライナへ提供できるのはおそらく1万発弱。ウクライナ軍が1日に数十発撃てば、数か月後には在庫が尽きる計算だと言う。 長期戦 弾薬供給が重要…米戦略国際問題研究所上級顧問 マーク・カンシアン氏[ウクライナの教訓 侵略半年] : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)
[lxviii] Lance Cpl. Jose D. Lujano – http://www.marforpac.marines.mil/Photos.aspx?igphoto=2000021205, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=27278015による