2022年9月1日
はじめに
2023年度の防衛省の予算概算要求の全容が判明した。[i] 総額で5兆5947億円。この時点で、過去最大だった2021年度の5兆4898億円を1千億円以上凌駕している。[ii] 概算要求は、防衛省・自衛隊という〈官僚機構〉が作った予算要望であり、従来の防衛戦略の延長線上で作られたものと言ってよい。
今回はこれに加え、「事項要求」と呼ばれる〈項目だけ記載して金額を示さない予算要求〉が100件以上も見込まれる。事項要求は「官僚機構が〈政治に下駄を預けた〉部分」であり、年末に改訂される「安全保障戦略」「防衛大綱」「中期防衛力整備計画」の中身に応じて予算が上積みされることになる。上記安保3文書の改定では、「防衛費総額(NATO基準)がどこまでGDP比2%に迫るか」と「敵基地攻撃能力の保有が明記されるか」が最大の焦点となっている。[iii] 防衛省、国家安全保障局、財務省、外務省等の〈つばぜり合い〉も当然あるが、最終的な着地点は総理、関係大臣、自民党、公明党が行う政治折衝で決まる。仮に「敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有」が防衛大綱等に明記され、スタンド・オフ・ミサイル(後述)を5年間で例えば1,000発配備することが中期防に書き込まれれば、概算要求段階で事項要求となっていたスタンド・オフミサイルの欄に来年度分の必要額が計上される、というイメージだ。
「敵基地攻撃能力」の保有の是非は、今後の日本の防衛政策の進路を大きく左右する重要な課題である。ところが、今日本で行われている議論はどうにも浅い。例えば、兼原信克同志社大学特別客員教授(元国家安全保障局次長)はつい最近、タブロイド紙で「撃たれても、撃たれても、じっと耐えて、(安倍政権が導入を決めた)射程1,000キロの空対地ミサイルを敵の本土上陸まで使わずに待っているのか」と息巻き、「『日本にミサイルを撃ち込んだら撃ち返すぞ』と言ってこそ抑止が成立する。撃たれずに済むのである。反撃力の保持は当たり前だ」と主張した。[iv] その議論には〈細部〉がない。私は昔の大本営の精神論を思い浮かべてしまった。
AVP前号(第42号)で述べたとおり、敵基地攻撃能力の保有に関する私の見解は、「ウクライナ戦争の教訓として、核・ミサイル保有国に対する効用は低い」というものだ。[v] それはそれとして、本号では〈敵基地攻撃のリアル〉についても語っておきたい。
敵基地攻撃能力保有論の現状
AVP前号で説明したとおり、所謂「敵基地攻撃能力」とは、〈相手領域内を攻撃する能力〉のことだ。その議論には最近、2つの大きな変化が生じた。1つは「名称の変更」、もう1つは「攻撃対象の変更(追加)」である。
《名称変更~「反撃能力」と言い換え》
自民党は今年4月26日にまとめた安保提言で、敵基地攻撃能力のことを「反撃能力」と呼ぶことにした。[vi] 以下は提言からの抜粋である。
わが国は米国との緊密な連携の下、相手領域内への打撃についてはこれまで米国に依存してきた。しかし、ミサイル技術の急速な変化・進化により迎撃は困難となってきており、迎撃のみではわが国を防衛しきれない恐れがある。このような厳しい状況を踏まえ、憲法及び国際法の範囲内で日米の基本的な役割分担を維持しつつ、専守防衛の考え方の下で、弾道ミサイル攻撃を含むわが国への武力攻撃に対する反撃能力(counterstrike capabilities)を保有し、これらの攻撃を抑止し、対処する。
政府も自民党提言に倣い、今度は「反撃能力」の呼称を使う模様だ。しかし、「反撃」だけなら、日本の領土内でも公海・公空上でも行う。「敵基地反撃能力」や「敵領土内反撃能力」ならばともかく、「反撃能力」では〈相手の領域内を攻撃する〉という肝心の部分が表に出てこない。まるで、統一教会の名称変更のようだ。[vii]
本稿では、引用等でそれがふさわしい場合には「反撃能力」という呼称を用い、それ以外の場合は従来通り、「敵基地攻撃能力」という言葉を使う。
《標的の拡大~「ミサイル対処」から「A2/ADへの対抗」へ?》
そもそも、敵基地攻撃能力の議論が出てきたきっかけは、テポドン・ショック――1998年8月31日に北朝鮮の大陸間弾道ミサイルが日本上空を通過した――を含む北朝鮮のミサイル開発・配備だった。攻撃対象として想定されたのも、北朝鮮のミサイル基地である。自民党は遅くとも2010年6月には「わが国自身による敵ミサイル基地攻撃能力の保有を検討すべき」という見解をまとめている。[viii] 「策源地攻撃」という言葉もよく用いられていた。なお、北朝鮮や中国のミサイルは現在、ほとんどすべてがTEL(transporter erector launcher)と呼ばれる発射台付き車両に載せられた運用となっている。[ix] そのため、「敵基地」を叩くということはTELを叩くこととほぼ同義である。
今回の自民党提言では、「反撃能力の対象範囲は、相手国のミサイル基地に限定されるものではなく、相手国の指揮命令系統等も含むものとする」とされた。特に限定はないので、軍用飛行場、弾薬庫、燃料貯蔵庫、レーダー施設、通信施設など、相手国の軍事機能のすべてに標的が広がった、と考えてよかろう。[x]
ウクライナ戦争を見ればわかると思うが、戦争はミサイルのみで行われるものではない。通常弾頭であれば、ミサイルによる被害は直ちに国の存亡にかかわるほどのものでもない。そう考えると、ミサイル基地のみを標的にすることに軍事戦略としての妥当性は見出しづらい。
日本の防衛態勢を考える場合、北朝鮮の空軍・海軍力はほとんど無視してもよい。だが、中国軍の空軍・海軍力は日本にとって深刻な潜在的脅威だ。日本周辺で中国軍に航空優勢・海上優勢をとられたら、日本国民及び日本領土が被る打撃は(通常弾頭)ミサイルの比ではない。中国軍の「接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略(コラム①参照)がヤバいのはまさにこのためである。
では、中国軍に航空優勢・海上優勢をとらせないためには、どうすればよいか? そこで出てくるのが、中国領内の空軍・海軍拠点を叩く、という発想だ。[xi]
【コラム①:接近阻止・領域拒否(A2/AD)とは?】
接近阻止・領域拒否(Anti-Access/Area Denial=略称A2/AD)とは、中国軍の東アジアにおける対米軍事戦略に米側が名前をつけたもの。中国側がこの呼称を公式に使っているわけではない。「接近阻止」とは文字通り、米軍が第一列島線の中国側に入って来られないようにすることであり、「領域拒否」とは米軍が第二列島線の中国側で自由に行動できないようにすることである。厳めしい響きでわかりにくいと思うが、要するに、中国軍が自国領域の近傍で制空権・制海権をとり、もう少し離れた領域でも航空優勢・海上優勢を確保しようとする軍事戦略のことだと思っておけばよい。
[第1列島線(赤線左)と第2列島線(同右)] [xii]
A2/ADを実現するため、中国は過去20年近くの間、空軍、海軍、ミサイル、サイバー、宇宙などの領域で積極的な投資を行い、日本やグアムにある米軍基地に大きな打撃を加え、東シナ海等で米艦船等を破壊する能力を獲得するに至った。(現時点で中国軍が米軍を確実に打ち負かすことができるようになったという意味ではない。) 言うまでもなく、中国のA2/AD能力は自衛隊に対しても極めて有効である。
ただし、自民党の国会議員たちが上記のような議論を十分に踏まえたうえで安保提言をまとめたのか否かは、あまりはっきりしない。[xiii] 自民党安保提言は攻撃対象を拡大している一方で、反撃能力(敵基地攻撃能力)を持つべきだというロジックは〈ミサイル脅威への対処〉という過去の文脈を色濃く引きずっているからだ。いずれにせよ、敵基地攻撃に関する戦略概念は今後、「ミサイル対処」から「中国のA2/ADへの対抗」へ比重を移していく可能性が高い、と私は見ている。
以上、敵基地攻撃能力保有論を理論的側面から私なりに整理してみた。純粋に防衛理論として見れば、それなりにアピールする部分はある。ごく自然な感情としても、「相手が日本をミサイルの射程に入れているのだから、こちらも同じようにして何が悪い?」という気持ちを我々が持つのは当然であろう。しかし、現実に適合しない政策に合格点はつけられない。ここから先は、敵基地攻撃能力の保有を主張する人々やそれを是とする人々が敵基地攻撃能力について抱いている〈3つの誤解〉について解説を行っていく。
誤解① スタンド・オフ・ミサイルで中国領内に届く
8月21日付読売新聞は概算要求(事項要求)に関連して、「長射程巡航ミサイル、1000発以上の保有検討・・・『反撃能力』の中核に」と報じた。[xiv] NHKも「相手のミサイル発射基地などをたたく『反撃能力』も念頭に、敵の射程圏外から攻撃できる『スタンド・オフ・ミサイル』の量産を始める」と伝えた。こうした報道に接すれば、中国や北朝鮮の領土内にある軍事拠点を叩けるミサイルを持てるようになる、と思う人が多いと思う。だが、現実は大きく異なる。
《スタンド・オフ・ミサイルの保有》
自衛隊がスタンド・オフ・ミサイル(コラム②参照)を持つ、ということは新しい方針ではない。2018年12月に策定された現防衛大綱にも明記されており、2020年12月の閣議決定でもアップデートされたところだ。
【コラム②:スタンド・オフ・ミサイルとは?】
「スタンド・オフ」とは、敵の脅威圏(≒迎撃ミサイル等の射程内)の外側に「離れて立っている」という意味である。その種の防衛力を「スタンド・オフ防衛力」と総称する。わかりやすく具体例で説明しよう。
下図Aは、自衛隊の戦闘機が搭載している対艦ミサイルの射程が150km、相手国の駆逐艦に搭載された対空ミサイルの射程が250㎞とした概念図である。自衛隊機は相手を攻撃するためには150㎞以内に近づかなければならないが、250㎞以内に接近した時点で敵の対空ミサイルが襲ってくる。自衛隊員の生命は危険にさらされ、戦闘面で圧倒的に不利だ。
では、自衛隊機に積む対艦ミサイルの射程が500㎞(=下図B)ならどうか? 自衛隊機は敵の対空ミサイルの射程の外側から駆逐艦を攻撃することができる。戦闘は日本側有利になり、自衛隊員の安全性も高まる。同様のことは、陸自のミサイル部隊や自衛艦が配備するミサイルについても当てはまる。
このように、相手の脅威圏の外から発射する長射程ミサイルをスタンド・オフ・ミサイルと呼ぶ。スタンド・オフか否かは〈彼我のミサイルの射程の相対的関係〉で決まる。上の例で言えば、相手の駆逐艦に搭載された対空ミサイルの射程が1,000㎞に伸びれば、自衛隊機の500㎞の対艦ミサイルは「スタンド・オフ」ではなくなる。
なお、上記の説明は自衛隊と中国軍が「1対1」で戦う場合の話である。実際の戦闘になると〈航空機等の数〉や〈戦域の位置〉等の影響も大きい。スタンド・オフ防衛力を持てば自衛隊が必ず勝てるようになる、というわけではない。
こうした方針に基づき、現在、航空自衛隊はF35戦闘機にJSM(射程500㎞、ノルウェー製)、F15戦闘機にJASSM(射程900㎞、米国製)及びLRASM(射程900㎞、米国製→その後、計画中止)、F2支援戦闘機に12式地対艦誘導弾改良型(国産、射程900㎞?)等の長射程巡航ミサイルを搭載する計画を進めている。[xv] 陸上自衛隊は、主に南西諸島など島嶼部に配備する12式地対空誘導弾の射程を現行の約200㎞から当面900㎞、最終的には1,500㎞に伸ばす予定と言われる。海上自衛隊も艦船や潜水艦に射程1,000㎞程度のミサイルを配備することを検討している模様だ。[xvi]
ただし、価格高騰や部品不足等の影響によってスタンド・オフ・ミサイルの導入は計画から遅れているのが実情だ。ウクライナ戦争の結果、国際的な兵器調達難はますます激化しそうである。こうした観点も踏まえ、年末に決まる新しい大綱と中期防ではスタンド・オフ・ミサイルの国産化が謳われるかもしれない。[xvii]
《敵基地攻撃能力への転用?》
私自身は、スタンド・オフ・防衛能力の保有・強化は必須だと考えている。ただし、スタンド・オフ防衛能力は、彼我のミサイル射程の相対的優位性に着目した概念であり、敵基地攻撃とは本来、何の関係もない。現在、自衛隊が配備を進めようとしているスタンド・オフ・ミサイルも基本的には対艦用途である。
だが、スタンド・オフ・ミサイルの射程が伸びてくると、「スタンド・オフ防衛能力として配備するミサイルを対地攻撃に転用すれば、敵基地攻撃能力になる」という発想が出てきた。実際のところはどうなのだろうか?
ここでは、「自衛隊が最大射程1,000㎞の巡航ミサイルを配備し、標的探知装置(シーカー)を対艦用から対地用に換えた」という例で説明してみたい。それによって敵基地攻撃ができるようになる、という思う人たちは、荒っぽく言えば下図のようなイメージを持っていると思う。[xviii]
青色の円は那覇から1,000㎞圏を示している。沖縄本島からミサイルを撃てば、上海や浙江省くらいには届きそうに見える。石垣島からだと福建省の全域もカバーできそうだ。赤色の円は上海沖から1,000㎞圏である。ここまで自衛隊の航空機や艦船が出張って行けば、中国大陸のかなり内陸部までミサイルが届きそうだ。しかし、このイメージ図は〈机上の空論〉を可視化したものにすぎない。
《実戦的には届かない・・・》
第一に、1,000㎞というのは、カタログ上の最大性能のようなものだ。巡航ミサイルは飛行機程度のスピードしかない。単純な軌道でまっすぐに飛んでいけば迎撃されやすい。実戦では高度を変えたり、障害物を避けたりしながら飛ばすため、作戦上〈計算〉できるのは最大射程の半分程度と考えられている。
第二に、上海沖はもちろん、日本列島の中国寄りまで航空自衛隊または海上自衛隊が出張って行き、大陸へミサイルを撃ち込むためには、自衛隊(+米軍)が第1列島線(南西諸島を含む日本列島)の中国寄りで航空優勢・海上優勢を確保できていなければならない。だが現実には、これができていない。コラム①でも述べたとおり、中国は長年、A2/AD戦略の一環として航空戦力・海上戦力を強化してきた。この地域における中国軍の航空戦力は数と性能を総合して自衛隊(及び在日米軍)の戦力に勝っている。レーダーを含めた防空システムや電子戦能力も向上し、無人機・サイバー・AIの活用などでは自衛隊の先を行くと考えられている。
映画『トップガン マーヴェリック』では、トム・クルーズ演じる天才パイロットがF/A-18戦闘機で第三国の内陸部にまで侵入して地対空ミサイルをかいくぐり、ウラン濃縮施設を見事破壊する。戻りではF-14戦闘機で敵の第5世代戦闘機を相手に互角以上に戦ってみせた。しかし、そんな芸当は現実の世界では起こらない。ウクライナ戦争の緒戦段階でも、ロシア空軍はウクライナの地対空ミサイルの餌食となった。知り合いの政府関係者も、「特攻隊みたいに行くんであれば、中国に近づいて長射程ミサイルを撃つという話もなくはありません。でも、そんな〈無駄死に〉は誰だって嫌ですよ」と眉をひそめて語る。
日本側が比較的安全なポジションから長射程ミサイルを発射しようと思えば、航空優勢・海上優勢を保てる第一列島線付近――できれば、その東側の方が望ましい――からになる。便宜上の実効射程を最大射程(1,000㎞)の6割とし、日本列島から長射程ミサイルを発射する場合のイメージが下図である。2つの赤円は、那覇基地(=下)と築城(福岡県)基地(=上)から600㎞の射程を地図に落としたもの。中国大陸には届かない。
将来、日本が保有するミサイルの長射程化がさらに進めば、この赤円はいつか中国大陸に届くようになるだろう。[xix] だが、単に大陸の端っこに届くだけでは意味がないから、相当な時間がかかるはず。今後10年程度かそれ以上の間、スタンド・オフ・ミサイルを転用して敵基地攻撃に使う、という考えは現実的でない。
誤解②.ミサイル発射車両を長射程ミサイルで叩く
自民党安保提言やマスコミ報道を見る限り、敵基地攻撃能力の基本想定は「スタンド・オフ・ミサイルを転用した長射程ミサイルを主要な攻撃手段とし、その主たる標的は中国(及び北朝鮮)のミサイル基地」ということのようだ。しかし、「長射程ミサイルで敵のミサイル基地を叩く」という発想は軍事的には〈非常識〉の一語に尽きる。何故か?[xx]
《攻撃目標(TEL)の位置がわからない》
敵基地(ミサイル基地)攻撃に対する最も厳しい批判の一つは、「攻撃目標、すなわちミサイルを搭載したTELの場所が事前にはわからない」というもの。
TELはミサイル発射の前は地下施設などに隠匿されており、地上に出てから15分程度でミサイル発射態勢に入ると言う。その動きを衛星等でリアルタイムに追跡することは不可能だ。有人・無心を問わず、航空機で偵察しようにも、中国領内の制空権は中国軍が掌握している。また、中国のような国では工作員を通じて中国全土に展開するTELの情報を得ることもむずかしい。[xxi] 長射程ミサイルをどこへ向けて撃てばよいのかがわからなければ、敵基地攻撃にはならない。
この強力な批判に対して、次のような反論を耳にすることがある。まず、「ミサイルの発射後であれば、衛星コンステレーション[xxii]や無人機、AIを駆使すれば、TELのリアルタイム位置情報の探知が近い将来、可能になる」という〈技術の力〉への期待が表明される。そのうえで、「ミサイル発射後であってもTELを破壊できれば、最初の数発は撃たれても次のミサイル発射は阻止できる。最終的には日本に対するミサイル攻撃を減らすことができるため、大きな意義がある」と考えるのだ。
しかし、ミサイル発射後であってもTELのリアルタイム位置情報の探知が実用段階に入ったという話は聞いたことがない。その「ビッグ・イフ」がクリアされたとしても、中国の場合は防空体制が確立されており、いざとなったらこちら側の衛星も破壊できる。期待どおりに事が運ぶと思うのは虫が良すぎるというものだ。
それでもどうしても敵基地攻撃能力がほしい、と思う人たちは、「敵基地攻撃能力は防空体制の弱い北朝鮮を念頭に置いたものだ」という無理筋を持ち出すかもしれない。だが、長射程ミサイルによるTELの破壊が非現実的である理由は、ほかにもある。
《移動目標の攻撃は空爆による、がセオリー》
1990年8月に始まった湾岸戦争をはじめ、アフガン戦争やイラク戦争などで米国は巡航ミサイル・トマホークを使って敵の領土内を何度も攻撃した。
比較的最近では、2017年4月6日にトランプ政権がシリアの空軍基地に対して地中海に展開する駆逐艦からトマホークを59発撃ち込んだ。2018年4月13日にも米英仏はシリアの化学兵器施設に対してミサイル攻撃を行っている。この時、米軍はB-1爆撃機から巡航ミサイル・JASSM(射程370㎞)を19発、紅海とペルシャ湾に展開する駆逐艦からトマホークを100発以上撃ったと言われている。
我々の脳には知らず知らずのうちに「遠隔地からの敵基地攻撃=ミサイル」というイメージが刷り込まれてきた。「TELも遠く離れたところからミサイル攻撃すればよい」と条件反射的に考えるのも無理はない。
[トマホークで攻撃されたシリアのシャイラート飛行場(2017年4月7日撮影)] [xxiii]
※ 白丸のエリアがミサイルの着弾地点である。
だが、そこには錯覚がある。米軍がミサイルで敵の領土内を攻撃している場合の対象は、空軍基地しかり、化学工場しかり、すべて〈固定目標〉である。実際、軍事に詳しい人の間では、「移動目標の攻撃は空爆――有人航空機や無人機(UAVs)が〈目標に接近して〉から誘導爆弾や対地ミサイルを発射すること――による」というのが常識と言ってよい。
2021年2月25日、バイデン政権は在シリア親イラン武装勢力の弾薬搭載トラック等を破壊した。その実行手段は航空機による空爆であった。米軍はつい最近(2022年8月)もシリア領内の敵対勢力の車両やロケットランチャーを破壊している。これも攻撃ヘリや対地攻撃機によるものだった。[xxiv]
長射程巡航ミサイルの速度は時速800㎞程度である。[xxv] 沖縄-上海間の距離が約800㎞。自衛隊が中国軍のTELの位置情報を知ることができたとして、中国の沿岸部に展開するTELを狙って南西諸島から長射程ミサイルを撃てば、着弾までに1時間近くかかる。自衛隊の撃ったミサイルが着弾する頃には、中国軍のTELは当然、移動している。
将来、極超音速ミサイル(時速6,000㎞以上)が開発・配備されれば、着弾までの時間は8分程度まで短縮される計算になる。だが、8分でも逃げられることに変わりはない。それに、極超音速ミサイルは高価になるため、あまり多くは保有できない。
TELのような移動目標を仕留めようと思えば、航空機で接近して攻撃するしかない。北朝鮮軍のTELに対してもそれは例外ではない。
《空爆でTELを破壊する?》
ここまで言っても、往生際の悪い人は「航空自衛隊による空爆でTELを破壊すればよい」と言い出すかもしれない。だが、そのためには自衛隊機が中国領内に進入し、目標に近づいて空爆しなければならない。それは、自衛隊(及び米軍)が東シナ海上空のみならず、中国の領空でも航空優勢を確保して初めて可能になる。中国軍の実力がその程度のものなら、誰も中国脅威論など唱えはしない。
過去に米軍等が空爆を実施した例――イラク、スーダン、アフガニスタン、リビア、シリアなど―――を見ても、空軍力(防空体制)が事実上ないか、米軍と比べて非常に弱い国ばかりである。
下のグラフは第4世代及び第5世代戦闘機の日中比較である。この一事をとってみても、日本側の劣勢は明らか。実際に日中がサシで戦うことはないだろうが、米軍や台湾軍と合わせても、中国に近い領域で航空優勢をとることは極めてむずかしい。ましてや、中国領内に自衛隊機を突撃させれば、〈令和の特攻隊〉になってしまう。
[中国の第4・第5世代戦闘機数][xxvi]
※ 2022年の日中比較は 「319機対1,270機」 である。
誤解③.空軍基地等を長射程ミサイルで攻撃する・・・
自民党が4月にまとめた安保提言は、敵基地攻撃能力の対象範囲を「相手国のミサイル基地に限定されるものではなく、相手国の指揮命令系統等も含む」ことにした。例えば、空軍基地や弾薬庫等であれば、〈動かない〉。それなら、めでたく長射程ミサイルで攻撃できるのだろうか?[xxvii]
《有効な攻撃は困難》
誤解①で述べた問題、すなわち、「日本列島付近から比較的安全に発射することを考えた場合、実戦上中国本土まで届く長射程ミサイルの開発・配備には目途が立っていない」という点は、攻撃対象が移動目標か固定目標かとは無関係だ。予見しうる将来にわたり、自衛隊に配備される長射程ミサイル(=スタンド・オフ・ミサイルを転用したもの)は中国領内の空軍基地等まで届かない。
どうしても中国領内(の一部)まで届かせようと思えば、自衛隊機や自衛艦(潜水艦を含む)を中国大陸の近くまで進出させる必要がある。しかし、当該戦域では中国軍が航空優勢・海上優勢を確保しているため、自衛隊にとっては半ば〈玉砕覚悟〉の作戦になる。今日、そんなことを前提にした防衛戦略は許されない。
中国はシリアなどとは違い、防空能力(レーダーや地対空ミサイル網)がしっかりしている。幸運が自衛隊に味方して中国近傍から多少の巡航ミサイルを発射できたとしても、目標に到達できるミサイルの数はさらに減る。これでは大した戦果は見込めない。長射程ミサイルで中国領内の軍事施設(固定目標)をしっかり破壊しようと思えば、中国の防空システム(レーダーや地対空ミサイル)を機能停止させることも必要だ。地対空ミサイルの多くは移動式。リアルタイム位置情報が不可欠であるうえ、基本的には空爆で叩かなければならない。リアリティはますます下がる。
【中国軍が配備を進めるロシア製地対空ミサイルS400】[xxviii]
《究極的には「経済力の勝負」になる》
「最初から諦めるのは敗北主義。日本も歯を食いしばって防衛力を強化し、中国軍に負けないようにすればいいのだ」という意気軒高な意見もあろう。というか、最近はそういう意見が増えてきた。
今日の中国軍は自衛隊に質でほぼ並び、数では圧倒する。第5世代戦闘機、早期警戒機、電子戦機、空中給油機などをこちらが少しばかり増やしたところで、大勢を変えることはできない。自衛隊が中国方面に進出したうえで航空優勢を本気で獲得しようと思えば、戦闘機等を数倍に増やし、自民党提言にある「スタンド・オフ防衛力や衛星コンステレーション・無人機等による探知・追尾を含むISR(情報・監視・偵察)能力、さらには宇宙、サイバー、電磁波領域における相手方の一連の指揮統制機能の発揮等を妨げる能力や、デコイ(囮)をはじめとする欺瞞・欺騙」といった能力で中国軍と肩を並べることが必要だ。[xxix]
米国ですら、中国領内への攻撃を本格的に行うための態勢はとれていない。日本がそれをやろうとすれば、どれほどの予算と人的資源が必要になるのか、私には見当もつかない。そもそも、それが可能かどうかさえ疑わしい。
また、防衛予算を増やすと言っても、戦時中ではないのだから、実際には限りがある。限られたヒト・モノ・カネを敵基地攻撃能力の構築に振り向ければ、本当に必要で優先度の高い部分(=専守防衛の穴をふさぐこと)に回せる予算は減ってしまう。
自民党の右の人たちは「日本は防衛予算の対GDP比を現在の1.24%(NATO基準)から2%に増額する」と鼻息が荒い。しかし、中国が攻守両面で対抗措置を取れば、彼らの思惑は簡単にはずれてしまう。
日本の態度如何にかかわらず、中国が軍備増強を続けるであろうことは疑いない。だが、日本が中国領内への攻撃を念頭に置いて防衛力を大々的に拡張すれば、中国の軍備増強ペースが加速されることもまた確かだ。
今日、中国のGDPは日本のGDPのざっと3倍。中国の経済成長率は今後低下し、現在の5%程度から2030年頃には3%くらいまで低下するという見方もある。だが、日本経済はもっとひどい。2030年までの日本経済の成長率は実質で1%未満、名目でも1%台前半という予測が多い。[xxx] にもかかわらず、岸田内閣から生産性向上や人口減少対策に本気で取り組む姿勢は見えてこない。[xxxi] 悲しいかな、GDPの日中格差は当面、開く一方であろう。
加えて、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の推計によれば、2021年の中国の軍事予算の対GDP比は1.7%にとどまる。米国の3.5%、ロシアの4.1%、インドの2.7%などと比べ、ずっと低い。日本が防衛予算の対GDP比率を上げても、中国がそれについて来たり、それ以上に比率を上げたりすることは十分に可能と見ておくべきだ。
日本は今、できもしない中国領内への攻撃を声高に叫んで中国の危機感や警戒感をことさらに煽り、「中長期的には経済力が大きくものをいう競争」に自らはまろうとしている。〈頭悪すぎ〉である。
おわりに
攻撃対象がTELなどの移動目標であれ、空軍基地などの固定目標であれ、攻撃手段が長射程ミサイルによる遠隔攻撃であれ、中国領内に進入して行う空爆であれ、中国に対して有効な敵基地攻撃を行えると考えるのはおよそ非現実的である。しかも、AVP前号(第42号)で述べたとおり、中国領内を攻撃して中国を軍事的に追い込んだ瞬間、我々は中国が核兵器を使用するという致命的な危険に直面することになる。敵基地攻撃なんぞに予算を投じることは正気の沙汰ではない。
一方で、自民党は先の参議院選挙で「弾道ミサイル攻撃を含むわが国への武力攻撃に対する反撃能力」、去年の総選挙では「相手領域内で弾道ミサイルなどを阻止する能力」の保有を公約に掲げ、ともに大勝した。自民党の党内力学を見ても、メディアや国民の多くが「敵基地攻撃能力渇望症」にかかっている国内情勢を考えても、リーダーシップや決断とは無縁の岸田文雄総理が敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有に〈ゼロ回答〉ということはなさそうな気がする。
いずれにせよ、政府は反撃能力について12月までには何らかの結論を出さなければならない。では、岸田内閣はこの議論をどのような〈落としどころ〉に着地させるのだろうか? 論理的に考えられる選択肢は以下の3つだ。
第1は、反撃能力の保有に触れない、というもの。だが、上述の理由から、岸田がこの選択肢をとる可能性は低い。
第2は、スタンド・オフ防衛力の強化を強調し、スタンド・オフ・ミサイルを反撃能力としても使うことができる、という類いの記述でごまかすこと。本稿で説明した〈誤解〉を誤解のまま放置し、とにかく「反撃能力を持つ」という言葉を入れて右のおバカな議員とマスコミに矛を収めさせるのである。実際のスタンド・オフ・ミサイルの運用は、中国領内を攻撃対象とするのではなく、東シナ海の対艦用途が中心になるだろう。
第3は、名実ともに反撃能力の保有・強化を書き込むこと。費用対効果が著しく低く、最悪の場合は核攻撃を招きかねない能力の構築に多額の予算を回すのだ。最も愚かな選択肢と言ってよい。岸田内閣に多少でも良識が残っていれば、さすがにこれはないと思うのだが…。
私の残念な予想では、第2の選択肢となる可能性が最も高い。安保3文書で「反撃能力の保有」について記述する際、空軍力・海軍力の弱い北朝鮮のみを名指しするというバリエーションもあり得る。いずれにせよ、「反撃能力(敵基地攻撃能力)」を中途半端に記述すれば、早晩、その解釈をめぐって右の自民党議員たちが騒ぎ出す。敵基地攻撃をめぐる議論の混乱は来年以降も続くこととなろう。
[i] 省庁がまとめた概算要求を財務省が査定し、与党内の調整や大臣折衝などを経て12月に政府予算案が閣議決定される、というのが政府の予算編成プロセスである。
[ii] 防衛費「事項要求」100超 概算要求5兆5947億円で調整―長射程ミサイル量産視野:時事ドットコム (jiji.com) なお、防衛省の概算要求の解説としては、以下がよくまとまっている。防衛省 過去最大の要求額「スタンド・オフ・ミサイル」も | NHK政治マガジン
[iii] 近年は補正予算で防衛費を増額することが常態化している。昨年度は「当初予算+補正予算」の対GDP比がNATO基準(恩給費やPKO費を含む)で1.24%となった。2023年度の防衛予算の対GDP比が今年の年末時点で確定することはない。
[iv] 【令和の国難】〝祖国を戦場にするな〟ウクライナに見る専守防衛の過酷さ 敵の上陸待つなど本末転倒、反撃力の保持は当たり前だ(1/3ページ) – zakzak:夕刊フジ公式サイト
[vi] 新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた提言 ~より深刻化する国際情勢下におけるわが国及び国際社会の平和と安全を確保するための防衛力の抜本的強化の実現に向けて~ (nifcloud.com)
[vii] 2015年8月、統一教会による「世界平和統一家庭連合」への名称変更が文科省・文化庁によって認証された。この名称変更の理由については、「名称変更して新たな被害者を獲得するとともに、被害回復請求を抑制する目的で行うものだ」との指摘もある。 「統一教会」の名称変更手続きは本当に機械的だったのか 悲願の重大案件なのにずさんだった申請書類とは:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)
[viii] 自由民主党政務調査会・国防部会 提言・新防衛計画の大綱について -国家の平和・独立と国民の安全・安心確保の更なる進展- (jimin.jp)
[ix] 今後は潜水艦発射式のミサイルも漸増していくと予想される。
[x] 米ハドソン研究所の村野将氏は、具体的な攻撃目標として「滑走路、航空機や爆撃機の格納庫や掩体壕、弾薬庫、燃料貯蔵庫、レーダー施設、通信施設、指揮統制システムなど」を列挙している。 「敵基地攻撃能力」の議論の前に日米同盟の再定義を 安全保障戦略の見直しに向け、日米で「戦い方」の共有が必要だ Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン) (ismedia.jp)
[xi] 中国領内の固定目標に対する攻撃が必要であることの理論づけについては、下記の第2章(The Case for Japan Acquiring Counterstrike Capabilities: Limited Offensive Operations for a Defensive Strategy)が詳しい。Japan’s Possible Acquisition of Long-Range Land-Attack Missiles and the Implications for the U.S.-Japan Alliance: Summary of a February 2021 Conference | RAND
[xii] DoD – Image:China Report 2006.pdf, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=812176による
[xiii] 自民党の防衛族と言われる議員の発言を聞く限り、敵基地攻撃能力(反撃能力)が必要な理由として安全保障戦略上の理屈は〈二の次〉で、もっと情緒的な理由を重視しているようにも思える。例えば、8月21日のフジテレビの番組(前掲)で小野寺五典は「戦争を起こさないためには、相手から見くびられない、この国は強いんだと思ってもらうことが大切だ。(中略) ウクライナは自ら戦うという意思が強く、一生懸命戦っているから欧米は武器を供与している。日本が戦う意思を持たなければ、日米同盟は機能しない。(中略) 反撃能力を含め日本もそれなりの能力を持つことは戦争を起こさせないための大事な力だ」と強調していた。
[xiv] 【独自】長射程巡航ミサイル、1000発以上の保有検討…「反撃能力」の中核に : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)
[xv] 原材料不足や費用高騰によってJSMやJASSMの導入は当初計画よりも大幅に遅れている模様だ。 長距離巡航ミサイル取得に遅れ 空自のF35用、予算未執行 | 共同通信 (nordot.app)
[xvi] 【独自】海自潜水艦に1000キロ射程ミサイル…敵基地攻撃能力の具体化で検討 : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)
[xvii] ただし、国産ミサイルの方が高くつくことは言うまでもない。国産の開発が順調に進むという確たる見通しもなさそうである。
[xviii] 「地図で見る統計(jSTAT MAP)」を使用して筆者が作成した。ログイン (e-stat.go.jp) あくまでイメージであり、正確性についてはご容赦願いたい。
[xix] 自衛隊(及び在日米軍)がこの地域で航空優勢・海上優勢を今以上には失わないことが前提条件である。
[xx] 中国や北朝鮮のミサイルは、その多くが発射台付き車両(TEL)に載せられて運用されている。中国の場合、核弾頭搭載のICBM(大陸弾道弾)はサイロ(地下格納施設)によって、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)は潜水艦によって運用される。だが、これらを敵基地攻撃で叩くという議論は聞いたことがない。この章では、「敵基地=中国のTELで運用されるミサイル」とみなして説明を行う。
[xxi] 詳細は田岡俊次氏の説明にお任せする。平和が続く日本で高まる「敵地攻撃論」の想像以上の危うさ | 田岡俊次の戦略目からウロコ | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)
[xxii] 数百機の小型人工衛星を打ち上げ、常時・広範囲のリアルタイム情報収集を行うもの。
[xxiii] Strikes On Shayrat Airfield, Syria Areas of Impact (defense.gov)
[xxiv] 米国がシリアで新たな空爆、ロケット弾攻撃による米兵の負傷受け 米当局者(1/2) – CNN.co.jp
[xxv] 巡航ミサイルの速度は、ミサイルの種類、航続距離によって様々だ。また、同じミサイルでも運用方法によって変化する。各国は今日、極超音速(=音速の5倍以上)巡航ミサイル・滑空体の開発にもしのぎを削っている。
[xxvi] 令和4年版 防衛白書、43ページ。wp2022_JP_Full_01.pdf (mod.go.jp)
[xxvii] 飛行場に対する攻撃で最も望ましいのは、航空機そのものを破壊することである。しかし、巡航ミサイルの速度を考えると、中国側がよほど無防備でない限り、航空機は退避するか防御施設に格納される可能性が高い。ミサイル攻撃で滑走路を使えなくすることはできるが、通常のミサイルによる攻撃であれば比較的短時間で修復され、使用可能な状態に戻る。その点、燃料貯蔵施設や弾薬庫を破壊する方が意味は大きい。
[xxviii] Соколрус – 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=40082350による
[xxix] 中国の周辺空域や領空内で航空優勢をとれる態勢をつくるということは、〈日本も中国並みの軍事大国になる〉ということを意味する。日本はこれまで中国の軍事大国化を批判してきたが、そんな批判はもうできなくなる。
[xxx] https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2021/10/news_release_211013.pdf
[xxxi] その点、米国(バイデン政権)は米中対立の帰趨は最終的に総合国力の優劣で決まると見通しており、米国経済の拡大と生産性向上のために莫大な投資を行おうとしている。ただし、党派対立のためにそれが思惑通りのペースで進んでいないところが米国の頭痛の種。それでも、“too little, too late as usual”の日本よりはずっと〈まとも〉だ。